お客様の古い眼鏡から
生まれたヴィンテージ。
少し以前になりますが、オブジェにひとりのお客様が眼鏡フレームの修理に来られました。おそらくは昭和の初期に製作されたと思われるそのフレームにふれた時、眼鏡の製作に携わるものとしてある種の感動がありました。お客様のご要望はフレームのリム部分を継ぎの技術で修復して欲しいということでしたので眼鏡をお預かりし、出来る限りその眼鏡が製作された時の状態に近づけるため、リムの構造からミクロン単位のフォーミングの厚みに至るまで分析している中で、その造作にまた感激しました。お客様の眼鏡フレームは磁器の金継ぎのような技術で修復をさせていただいたのですが、納得がいかずお客様に「この眼鏡の存在感と美しい造作からなる味わい深さを持つ眼鏡を現在の素材と技術で再現したいので、一年間お預かりしたい」と、無茶なお願いをしました。そんな無理なお願いにお客様は、ぼろぼろだけどこの大好きな眼鏡の価値を感じてもらえるならと快く預けてくださいました。そして信頼の出来る各分野の技術職人達と、材質の吟味、構造、メッキ加工、磨き、人間工学に基づいた動きと装着感などを徹底的に研究し、一年と八ヶ月かけて完成させたのがこの眼鏡です。そして今回、1年以上の歳月をかけて創意工夫を重ねながら鼈甲の止め方、かけ心地、ホールド感、質感等を改善させました。
仕様と材質について
obj vintage I は、2種類のチタニウムによってフレームを形成しています。 フレームのフロント部分の材質はオブジェが得意とするピュアチタニウムを採用。耐久性を高めると同時に軽量化も追求した合理的なスタイリングを構成しています。テンプル部分にはチタニウムの持つ耐久性を利用して、しなりを持たせたベータチタニウムを使用。画期的な弾力性を持ち合わせ、フェイスをしなやかにホールドします。テンプルの厚みも絶妙に変化をさせ、より心地よい装着感を実現。テンプルエンドには肌に優しい特殊シリコン製で画期的な接着方法でベータチタニウムに装着しています。眼鏡の隠された実力が現れるといわれるノーズパッドは鼈甲でアレンジしています。
obj vintage I は、部品や仕上げ加工などから4種類の型式を用意いたしました。
●アンティーク・ゴールド
24kの厚メッキを施した後、その上からアレルギーフリーのグレーメッキをかけ、最後に熟練した職人の手作業によるシャーリングで風合いを巧みに出しています。ノーズパッドには鼈甲を採用しています。
●アンティーク・シルバー
純銀の厚メッキを施した後、硫化(ムトウハップ)させ、最後に手作業によるシャーリングで風合いを出しています。ノーズパッドには鼈甲を採用しています。
●ゴールド
18kで通常より4倍の厚みでプレーティングを施しています。ノーズパッドには鼈甲を採用しています。
●プラチナ
18kの厚メッキを施した後、その上からプラチナフォーミングで仕上げています。ノーズパッドには鼈甲を採用しています。
●obj Vintage I Original Case
ケースにも様々な材質を徹底的に吟味して、いい意味での遊びを感じていただけるような付加価値を持たせて製作しました。選り抜いた木を使用し、越前の漆職人による数十の行程を経て仕上がる最高の漆塗りで仕上げました。ケースの蝶板も型から起こしたこのケースのためのオリジナル。ケースの内部は眼鏡を優しくいたわることに適した目の細かいセーム革を使っています。日本古来の武具などに使用されてきた丈夫で最高の質感を持つ革を張りつめています。さらにそのケースを包む和紙は、奈良県吉野の清らかな吉野川沿いの山里にて和紙造りの名工が丹誠込めて仕上げる手漉きの和紙。桜の里で漉かれた、透けるようなのに強くてしなやかな桜紙で、オブジェ・ヴィンテージのケースは包まれています。