お客様の古い眼鏡から
生まれたヴィンテージ。
以前、オブジェにひとりのお客様が眼鏡フレームの修理に来られました。おそらくは昭和の初期に製作されたと思われるそのフレームにふれた時、眼鏡の製作に携わるものとしてある種の感動がありました。お客様のご要望はフレームのリム部分を継ぎの技術で修復して欲しいということでしたので眼鏡をお預かりし、出来る限りその眼鏡が製作された時の状態に近づけるため、リムの構造からミクロン単位のフォーミングの厚みに至るまで分析している中で、その造作にまた感激しました。お客様の眼鏡フレームは磁器の金継ぎのような技術で修復をさせていただいたのですが、納得がいかずお客様に「この眼鏡の存在感と美しい造作からなる味わい深さを持つ眼鏡を現在の素材と技術で再現したいので、一年間お預かりしたい」と、無茶なお願いをしました。そんな無理なお願いにお客様は、ぼろぼろだけどこの大好きな眼鏡の価値を感じてもらえるならと快く預けてくださいました。そして信頼の出来る各分野の技術職人達と、材質の吟味、構造、メッキ加工、磨き、人間工学に基づいた動きと装着感などを徹底的に研究し、一年と八ヶ月かけて完成させたのがオブジェ・ヴィンテージです。そして、さらに素材や加工技術に徹底的にこだわり、進化させたモデルがobj Vintage IIなのです。
日本の伝統的な素材と
伝承技術の集結。
そして新たなるトラディショナルへ。
古来より伝わり育まれてきた日本の美意識と、それを表現し、支えてきた多様な自然素材と職人達の伝承技術を文化と言っても過言ではありません。obj Vintage IIは、あえて出来る限りの日本ならではの素材と手作業の技術を用いて、この時代へプレゼンテーションする作品的な眼鏡です。
作り手の思いと、
ストーリーのないものには
ヴィンテージという形容を
することは出来ない。
obj Vintage IIは、2種類の機能と性質の異なるチタニウムによってフレームを形成されています。フレームの材質は、フロント部分がオブジェが得意とするピュアチタニウムを採用。耐久性を高めると同時に軽量化も追求した合理的なスタイリングを構成しています。テンプルの部分には、ピュアチタニウムと性質が異なるベータチタニウムを使用。ベータチタニウムの持つ耐久性を逆手にとるように利用し、細いラインの美しさと弾力性を持ち合わせ、そのしなりでフェイスをやわらかくホールドします。テンプルの厚みも絶妙に変化をさせ、より心地よい装着感を実現しています。
飽きのこないフレームデザイン。
シンプルでありながら顔の表情を穏和にもクールにも表現する、ボストンシェイプ。日本の伝統的素材や伝承技術と、アメリカントラディショナルを感じさせるシェイプデザインの融合のおもしろさも見逃せません。
テンプルエンドには、鼈甲。
ノーズパッドは蝶貝などをアレンジ。
obj Vintage IIは、かけている時には見えない部分にも徹底的にこだわっています。モダンと呼ばれるテンプルエンドには肌に優しく体温を微妙に吸収する鼈甲を使用。眼鏡の隠された実力が現れるといわれるノーズパッドは、フレームの仕上げに合わせ、おそらく世界で初めてと思われる、白蝶貝、黒蝶貝、茶蝶貝、タカセ貝の4種類の貝を使って見事にアレンジしています。
質感をセレクト出来る
4種類の仕上げ加工。
obj Vintage IIは、材質と
仕上げ加工の異なる
4タイプがあります。
●アンティーク・ゴールド
24kの厚メッキ(通常の10倍)を施した後、その上からアレルギーフリーのグレーメッキをかけ、最後に熟練した職人の手作業によるシャーリングで風合いを巧みに出しています。ノーズパッドは、茶蝶貝、テンプルエンドには、鼈甲を採用しています。
●アンティーク・シルバー
純銀の厚メッキを施した後、硫化(ムトウハップ)させ、最後に手作業によるシャーリングで風合いを出しています。貝パッドは、黒蝶貝、テンプルエンドには、鼈甲を採用しています。
●ゴールド
18kで通常より4倍の厚みでプレーティングを施しています。ノーズパッドは、タカセ貝、テンプルエンドには、鼈甲を採用しています。
●プラチナ
最良の下地を施した後、その上からプラチナプレーティングで仕上げています。ノーズパッドには、白蝶貝、テンプルエンドには、鼈甲を採用しています。
木、漆、絹、蒔絵、和紙、
ヴィンテージならではの
オリジナルケース。
obj Vintage IIは、そのオリジナルケースにも様々な材質を徹底的に吟味して、いい意味での遊びを感じていただけるような付加価値を持たせて製作しました。選り抜いた木を使用し、越前の漆職人による数十の行程を経て仕上がる最高の漆塗りで仕上げました。objのロゴマークは越前の蒔絵職人の手によるものです。ケースの蝶板も型から起こしたこのケースのためのオリジナル。ケースの内部は、京都、祇園の古代ぎれの専門店で数千に及ぶ着物の布地からセレクトした少し遊びのある図柄や織り地のものを使っています。ですので、ひとつひとつ図柄の部分が違います。さらにそのケースを包む和紙は、奈良県吉野の清らかな吉野川沿いの山里にて和紙造りの名工が丹誠込めて仕上げる手漉きの和紙。桜の里で漉かれた、透けるようなのに強くてしなやかな桜紙で、オブジェ・ヴィンテージのケースは包まれています。